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外貨預金の呆れた実態

 

 

 

Part 3  「感謝」に思考の軸を移す

 

 しかし、これは決して悪いことではない。感謝の念を抱きながら生きている人のほうが、被害者意識にさいなまれている人よりも少なくとも幸福だし、ビジネスにおいても多くのチャンスを引き寄せる可能性があることは明らかだからである。

 

 被害者意識のある人は自己中心的に考える。それというのも、自分が受けた被害、あるいは払った犠牲に見合うものを受け取らない限りは、外に目を向けるだけの心のゆとりが得られないからである。けれども、それは容易に与えられるものではない。「社会が悪い」という言い方に典型的に見られるように、多くの場合は、そもそも誰が加害者であるとも特定できないものだし、いつまで待ったとしても社会は何かしら悪いに違いないからだ。そんなことより、自己中心的な思考を続けて人望を失い、孤立してしまう害のほうがよほど大きい。

 

 そんなことなら、いっそのこと意識的に「感謝」の方向に舵を切り、意識転換をはかったらどうか。正に、そのための非常識だが有効な方法が、「寄付」だということなのである。

 

 自己中心思考を転換して、「感謝」に思考の軸を置いたとき、自分を取巻く世界は一変するだろう。自己中心的思考においては、「人に与えるもの」よりも「自分が受け取るもの」のほうに意識が集中している。そうなると、「人に与える価値」を減らすことで「自分が受け取る価値」を増やせるのではないかという誘惑が常に付きまとう。

 

 

これに対して、「感謝」に思考の軸が移り、「自分が受け取るもの」よりも「人に与えるもの」に関心が向くと、自然に「人に与える価値」の向上について考えるようになるだろう。いまどき、1000円の価値のものを1000円で売っていても人を感動させることはできない。1000円で売っているものの価値が1000円以下だったら怒られるだろうが、1000円の価値のものを1000円で売っていても、人は「しかたなく」買うだけだ。1000円で売っているものの価値が1000円以上あると思うからこそ、人は喜んで買ってくれるのである。

 

そんなビジネス環境の中、自己中心的思考で生き残っていけるのは独占企業か規制産業くらいのものである。アメリカの自己啓発や成功哲学の多くが起業家や中小企業経営者に向けて書かれていることを書かれていることを考えると、そこで「感謝」が強調されているのは当然といってもいいくらいである。

 

 「寄付」のもう一つの効果は、強固な信念の形成である。チップ・コリンズの例を見てもわかるように、傍目から見れば単なる偶然にしかすぎないものが、彼にとっては「神のご加護」であって「必然」であるとしか思われない。この事実もやはり深層心理学的な「合理化」によって説明できるだろう。依頼主が同じ教会に居合わせたという偶然を必然と解釈することによって、なけなしの財産を寄付することの心理的負担が軽くなるのである。

1. 成功哲学は宗教的プロパガンダか 

                                                2. 寄付のパラドックス 

                                                 3. 感謝に思考の軸を移す 

                                                4. 投資と寄付の類縁性

 

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