プライベートバンクFAQ

外貨預金の呆れた実態

 

 

女銀行家の落ち度と架空銀行

このように、この映画をよく見てみると、映画本来の意図とは裏腹に、残念ながら悪いのは明らかにロミー・シュナイダーの方であって、「二百家族」が支配する既存の銀行には特別な落ち度はなかったという結論に達せざるを得ない。何故なら、彼女は投資信託をあたかも「預金」として販売し、その上8%の「金利保証」まで付けてしまったと見えるからである。前の年にいくらうまく行ったからといって、投資のリターンは確約することなどできないし、するべきでもない。できるかどうか分からないものを確約することは詐欺行為に通ずる。

実は、現代でも、インターネット上の自称「銀行」には、ファンドか投資信託としか思えない高金利を謳って預金者を募っているものが見受けられる。あまりに高金利なので不審に思って調べてみると、スイスの銀行当局に登録のない「架空の銀行(fake bank)」であることが分かったということもある。銀行の預金金利は高ければいいというものではない。その通貨の国債利回りなども参考にして、他行に比べて極端に高い金利を提示している銀行には気を付けた方がいいだろう。

 

 

「リスクは悪ではない」

詐欺的な「架空銀行」とは異なり、ロミー・シュナイダー演ずる女銀行家には「私財を擲っても返す」という悲壮な覚悟があるのは確かである。しかし、これはドラマとしては美しいかも知れないが、現実に莫大な損失を前にするなら、個人のヒロイズムなど児戯にも等しいと言うべきだろう。むしろ彼女は、これが預金ではなくて投資であると明言し、「8%の金利」を約束する代わりに投資のリスクと損失の可能性について言及するべきだったのだ。そして、「リスクは悪ではない」とも説明し、納得した顧客のみを相手にするべきであった。実際、投資は、投資である以上はリスクを伴うものの、長期的には経済の成長を直接に反映し、預金よりもむしろ有利な資産運用なのである。

ちなみに、フランスの平均株価指数は、この映画の舞台となっている1930年頃にいったんピークとなるが、その後戦争や戦後の混乱期を経て1950年頃に底を打ち、2000年頃にはおよそ50倍となっている。これでも、先進諸国の平均株価としては、かなり伸びの鈍い方である(この間、日本の平均株価は、1990年代の低迷を考慮しても100倍以上になっている)

映画「華麗なる女銀行家」の物語は、最後には悲劇的な結末を迎える。しかし、ロミー・シュナイダーこと女銀行家が、自らの行なっている運用を、「預金」ではなく、「投資」と認めた上で、このような長期的な経済成長の波に乗っていたなら、少なくとも「顧客の悲劇」は避けられたに違いない。

 

1 2 3

お金の歴史、文化と哲学

 

 

 

[Home] [Japan Law]

[Swiss Private Bank Account for Free] [Offshore Trust vs. Liechtenstein Foundation]