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皇帝フランツ・ヨーゼフと皇妃エリーザベト

1916年までの長きにわたって君臨したフランツ・ヨーゼフ帝は、英明な君主であったと言われている。民族意識が芽生え、領内のマジャール人、チェコ人、スロヴァキア人、セルビア人、クロアチア人、セルビア人、ルーマニア人などそれぞれに独立の機運が高まったこの時代に、北イタリアを失い、プロイセンに敗れるなど満身創痍の状態でありながら帝国の解体を何とか回避したのは、確かに凡君のなせる業ではなかったかも知れない。しかし、皇帝大権を最後まで手放さなかった彼の「英明さ」は、結局のところ「啓蒙専制君主」の延長線上にあった。

フランツ・ヨーゼフ帝の時代にようやく制定された憲法では、皇帝は大臣を任命する権限を有し、帝国議会で成立した法案に対する拒否権、議会の承認を要しない非常大権などが認められていた。これは、言わば大統領的な大きな権限である。

しかも、これは名目的なものではない。1867年、いわゆるアウスグライヒ(Ausgleich、「妥協」の意)によってオーストリア・ハンガリー二重帝国が成立するが、これには当時「ヨーロッパ随一の美女」と謳われた有名な皇妃エリーザベトの意向が強く反映しているとされる。つまり、当時のオーストリアの国家政策において、帝室は決して象徴的な存在にとどまらなかったのである。

 

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