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美術史における「趣味の変化」

趣味の変化が生じると、つい最近まで「美しい」と感じられたものが、「醜い」と思われるようになる。そして、それまでは「醜い」と思えたものに新たな美を見出すということが起こる。

些細な流行の変化まで含めれば、人類史上、このような変化は幾度となく起こった。単なる流行の変化を追うものではない美術史にとっても、大きな趣味の変化は時代を画する出来事として重要である()

()例えば、ワトーやブーシェ、フラゴナールなどの典雅なロココ調の絵画は、フランス革命後、雄渾な古典主義を愛した19世紀初頭の人々によって、王侯貴族の退廃を象徴する唾棄すべきものとみなされたし、ロマン主義以前のヨーロッパ美術界では「ゴシック的」と評されることは「醜悪」と言われるのとほとんど同義であった。

 

ゴシックからルネサンス、バロックからロココといった様式による美術史上の時代区分も、広い意味での「趣味の変化」に基づいていると言えるだろう。

 

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